リストラ除け? ぼたもち供養の頸つぎ餅
「まじない食」に込められた祈りはさまざまです。
祈りがあるということは、その源に悩みがあるということ。
「まじない食」の数だけ、人の悩みが見えてくるという面もあります。
なかでも世が移ろえば人の悩みも変わるものだと思わされる「まじない食」があります。
鎌倉・常栄寺(日蓮宗)の御法難会、別名ぼたもち供養でふるまわれる「頸つぎ餅」は、下記のような故事にちなんで誕生したものです。
―「立正安国」を主張し、幾多の迫害を受けた日蓮上人が、捕らえられ刑場だった龍ノ口に連行される途中、この地を通りかかったとき、尼がぼたもちを作って捧げたところ、その後刑場に謎の光が飛来し、役人がおそれおののき処刑が中止になったー
このことは後に「龍ノ口法難」と呼ばれるようになります。
毎年9月12日の「ぼたもち供養」では、故事にちなみ
「頸つぎ餅」とよばれる胡麻のぼたもちがふるまわれます。
あんこではなく胡麻をまぶしてある理由は、
あんこを炊く時間がなくサッと胡麻をまぶしたからだといいます。
名前の「首をつぐ」が転じたのでしょうか、
近年SNSで「リストラよけの餅」とも称されているのを見つけました。
確かに勤め人が大半となった現代では五穀豊穣よりもリストラの方が重大事ですね。
時代が変われば、人の悩みもまじない食の意味も変わっていくのだと考えさせられた事例でした。
箱入りで販売もされています。
※以前、 私が雑誌に寄稿した文章から一部抜粋、転載しました。